アフターコロナのドイツ見本市


新型肺炎の影響で開催中止となっていたドイツ見本市ですが、少しずつ、再開に向けて動き始めています。

2020年7月15日時点、ミュンヘンのあるバイエルン州、シュツットガルトのあるバーデン・ビュルテンベルク州、ハノーファーのあるニーダーザクセン州の3つの州を除いたすべての州で、原則的に見本市の開催許可が出ました。

ただし、現在ドイツは夏の休暇シーズンとなりますので、実際には大型国際見本市の開催はほとんどなく、本格的な再開は9月以降と見込まれています。

本年9月以降は、先に挙げた現時点で見本市の開催が禁止されている3つの州も開催可能となっています。

 

見本市の再開が現実的になってきた今、多くの人の関心が「アフターコロナの見本市はどのようになるのか」に向かっています。

 

ドイツの建築業界誌「DAB: Deutsches Architektenblatt(ドイツ建築家ジャーナル)」では、6月30日にフランクフルト、ミュンヘン、ケルンの見本市会社経営者へのインタビューを掲載しています。

建築業界誌なのに見本市会社?と思われるかもしれませんが、ドイツではあらゆる業界で見本市が重要な位置を占めているということを顕しています。

特にその中でも重要な役割を持つフランクフルト、ミュンヘン、ケルンの見本市会社経営者の話は、今後のドイツ見本市の活用に大きなヒントをくれていると思いますので、紹介します。

 

 

 

メッセフランクフルト 

"国際見本市の重要性は今後さらに高まると確信しています。"

 

メッセフランクフルトのCEO ウォルフガング・マルティン氏へのインタビューより

 

Q. コロナ感染拡大はビジネスにどのような影響を与えていますか?

 

現時点で世界中で40以上の見本市、10件のイベントの延期が決まっています。その中には世界的最大級の見本市Automechanika(オートメカニカ)やLight + Building(ライト&ビルディング)も含まれています。オートメカニカの新たな開催日程は2021年9月14日から18日まで、ライト&ビルディングは、2022年3月13日から18日の開催となります。

 

Q. 国外からの参加者が大半の国際見本市の未来をどのように見ていますか?

 

私達が提供する形での国際見本市は、これまで以上に重要になると確信しています。現在の状況のによって、ビジネスの上で人と人がお互いを深く知ることの重要性、必要性がさらに増しています。企業のマーケティングには、見本市ブースで実際に商品を知り、その売り手を知ってもらうことが不可欠です。今年後半および2021年以降の見本市がこれを実証することになるので、今はその準備に注力しています。同時に、デジタルでのプラットフォームが、今後の見本市を補完する役割を果たすと確信しています。例えば オートメカニカでは、延期期間を補うためのビデオ形式のトレーニングプログラムを充実させました。とはいえ、見本市の価値は人と人とが出会う場であることで、そのためには現在、衛生面およびソーシャルディスタンスの規則遵守が最優先となり、そのための対策を準備しています。

 

Q. 従来のように物理的に出会う形で見本市が開催されるのはいつになりますか?

 

 

現時点のドイツでは、2020年後半または2021年初めに従来の形での見本市を再開する予定です。状況は飛行機や鉄道、公共交通機関の状況がどのように規制されているか、また旅行制限が解除されているかによって異なります。今できるのは、「見通し」を基に計画をすすめ、柔軟に適応することです。ビフォーコロナの状況と今後とでは異なってきます。

 

私たちの使命は、製品を売り込むための最良のイベントプラットフォームを世界中の各業界に提供することです。中国では、広東省で見本市の再開が許可されるというニュースを聞きました。これにより、私達の中国での関連会社はも広東省で開催する見本市の準備を始めることができます。この流れに他の地域も続くと確信しています。

  

メッセミュンヘン 

"人的ネットワークがこれまで以上に重要になります。"

  

 

メッセミュンヘンCEO クラウス・ディートリッヒ氏へのインタビューより

 

Q. コロナ感染拡大はビジネスにどのような影響を与えていますか?

 

 

コロナ危機は我々の業界をあっという間に激しく襲った事件でした。見本市の主催者である我が社だけでなく、ブース設営会社、代理店、ケータリング業者などの多くのパートナーにも影響を与えています。最悪の場合、当社だけで2020年に2億4000万ユーロの損失を生じるかもしれません。 2020年はこれまで厳しい状況でありますが、まだあと半年あり、そのことが希望となっています。現在は今年後半に向けて、感染防止の対策に取り組んでいます。見本市は大きなイベントの一種ですが、一般的なお祭りとは異なります。万全な感染対策をとることで、スーパーマーケットで買い物をするよりも感染リスクを抑える事ができます。

 

Q. 代替形式への取り組みは?

 

現在の状況は、人間にとって個人的な出会いがいかに重要であるかを示しています。人的ネットワーキングのプラットフォームはこれまで以上に重要になり、そのことは見本市ビジネスの未来に希望を与えてくれます。同時に、コロナ危機はオンライン活用の需要が高まっていることも示しています。環境技術の見本市IFAT(イファット)やアウトドアスポーツフェアOutdoor by ISPO(アウトドア・バイ・イスポ)では、キャンセルされたイベントの代替となるデジタルプラットフォームを設置し、例えばアウトドア・バイ・イスポでは、ispo.comニュースポータル、ISPOジョブプラットフォームなどを提供しています。さらにISPO Open Innovationプラットフォームでは、スポーツ用品メーカーが、消費者を代表する「消費者エキスパート」と共同で製品開発を進める事ができます。デジタル化により、このような新サービスが生まれているのです。将来的には、見本市主催者としてだけでなく、年中無休で企業の皆さんがマーケティングに活用できるプラットフォームの提供も考えています。

 

Q. 今後の見本市の見通しは?

 

今秋の再開を目指し取り組んでいます。感染リスクに加え、出張の可否が再開後の成功の鍵となります。

見本市は今後もマーケティングミックスでの重要な役割を果たしていくと考えています。出展企業から寄せられる反応では、今後も見本市を重視していきたいという意見が多いのですが、見本市を取り巻く環境は異なってきます。アフターコロナの時代では、常に「どちらか」-つまりアナログかデジタルか‐ という価値観は不要となり、「どちらも」という発想が求められます。これまでアナログが主体であったかもしれない見本市が、デジタルと融合することで新たな価値を生み出します。

 

 

ケルンメッセ

"国際見本市はビジネスに不可欠です。"

   

ケルンメッセ見本市ORGATEC(オルガテック)ディレクター、トーマス・ポステアト氏へのインタビューより

 

Q. これまでのところ、コロナはどのような影響を与えていますか?

 

2020年2月末にケルンで開催された国際ハードウェアフェアは、コロナ危機でキャンセルされた最初のドイツの見本市の1つでした。海外、特にアジアではそれ以前から影響が出ていました。見本市参加者の健康に対する配慮が最優先で、 3月中旬にはPhotokina(フォトキナ)、THE TIRE COLOGNE(ザ・タイヤ・ケルン)、CCXP Cologneなど全ての見本市がキャンセルまたは延期となりました。その後、ドイツ国内での大型イベント禁止が決まり、前回37万人の参加者を集めたgamescom(ゲームズコム)は物理的なイベントとしてはキャンセルされ、デジタル形式で開催されることになりました。

 

Q. 将来の戦略を教えてください。

 

ノルトラインヴェストファーレン州では、2020年5月30日に、条件付きで見本市や会議の開催を許可しました。このため、spoga + gafaやspoga horseを始め、9月には通常通りに見本市をさいかいできる見込みです。見本市再開のために政府の説得を続けた私達の努力が報われました。見本市はスポーツイベントや一般向けに人気のフェスティバルとは根本的に異なります。ビジネスの世界の専門家の間のコミュニケーションを目的とし、経済発展に欠かせないのが見本市です。

 

秋以降に開催する見本市では、コロナ対策で定められた条件を満たすための対策をすでに準備しており、州および市の責任者と話し合いを続けています。8月末に完全デジタル形式で行われるgamescomに加え、今後の見本市でもデジタル形式の付加を検討しています。また、見本市会場で物理的に開催する従来型の見本市でも、需要側と供給側の企業をつなげるために見本市だからできる点にも集中して取り組んでいます。併設イベントやカンファレンス等、機能するものとしないものを精査していきます。

 

Q. アフターコロナ、またはウィズコロナでの見本市への展望は?

 

現時点の「ベストケースシナリオ」は、8月の終わりに開催するゲームコムから見本市をデジタルで開始し、9月から見本市会場で再開することです。達成に向け全力で取り組んでいます。見本市は、経済を可能な限り迅速かつ通常の状態に戻すために、不可欠のビジネスプラットフォームです。

 

国際見本市は、将来の成功に向けたソリューションとトレンドを提供する点で重要な役割を果たします。個々の見本市や産業が以前の強さを取り戻すまでには、時間がかかるかもしれません。見本市も最初は少し異なって見え、定められた条件の下でのみ実施されます。私たちにとって重要なのは、何よりも、見本市業界とお客様に「見本市が再開した!」というサインを送ることです。

 

 

以上、メッセフランクフルト、メッセミュンヘン、メッセケルン3社に共通しているのは、

 

・見本市は人と人、人と商品が直接に触れ合う場として今後も欠かせない存在

 

・その上で今後はデジタルの良さを従来形式の見本市に取り入れていく

 

という点です。

 

アナログのコミュニケーションをベースとし、長い歴史のある見本市も、今、デジタルの世界へと舵をきり始めているという事だと思います。

見本市でのデジタルコミュニケーションの活躍、ぜひ弊社のデジタルマーケティングを活かしてください!