再開したドイツ見本市、これからどう変わっていく?

 

青山 香織

アンサンブラウ イベント+マーケティング

 


約2年以上の休止期間を経て、今月より再始動に入ったドイツ見本市ですが、これだけの空白期間の後に、今までと全く同じような開催になるとは思えず、様々な意見が出ています。

休止期間中に開催されたオンライン上でのバーチャル見本市の経験も含め、これからのドイツ見本市がどのようになっていくのかについて、今、ドイツでの主だった見方について紹介します。

 

ドイツのBtoBコミュニケーションを取り纏めるドイツ産業コミュニケーション連盟では、昨年末に見本市業界関係者とワークショップを開催し、その時の議論を基に「スランプ後の再生:新しい見本市の世界でのチャンス」と題した文書を発表しました。ここで挙げられているのが、次の6つのキーワードです。

 

 1.パーソナルコンタクト

 2.ハイブリッド

 3.コンパクト・ローカル

 4.サステナビリティ

 5.プランニング(入念な準備)

 6.人材と技術

  

それぞれのキーワードについて説明します。

 

1.パーソナルコンタクト

 

見本市が開催されなかった空白期間、また開催されてもオンラインでのバーチャル見本市が主であった期間に再確認されたのが、従来の形での見本市が生み出す、「人と人とが直接に出会い交流できる機会」の貴重さでした。リアルな形での見本市ならではのメリットです。このメリットを最大限に活かせるような見本市出展を計画することが大切になってきます。

例えば、見本市ブースのレイアウトは、商談スペースを大きくとるなど、商談や話し合い等、直接に会って交流できるメリットを最優先とした出展プランが重要になります。また、ブース内でのコミュニケーションに限らず、ディスカッション形式のフォーラム等への積極的な参加を通して、直接的なコミュニケーションやネットワーキングを獲得する事が大きな成功に繋がると考えられています。 

 

2.ハイブリッド

 

デジタルでのコミュニケーションがスタンダードとなりつつある現在、それぞれの配分は業界や企業規模、ターゲットにより異なってきますが、見本市もこれからはデジタルとアナログのハイブリッド形式が主流。

見本市開催前にオンラインで商品情報を伝えておくことが出展者の基本となってくると、出展前にオンラインでのアプローチをしていないと、その時点で手遅れになってしまうかもしれません。

逆に、これまで距離的な問題から事前プロモーションが後回しになってしまっていた日本企業の皆さんにとっては、デジタルツールを上手く活用する事で事前プモーションが断然やりやすくなったとも言えます。

デジタルとアナログを上手く使い分ける事で、ブースへの集客増、そして商談機会増が可能になります。

 

3.コンパクト・ローカル

このキーワードは、今後のリスク要因として挙げられています。

今現在、再開したドイツ見本市ではアジアからの来場者が減少しており、将来的には国際見本市はアジアで開催されるようになるのではないかという推測まで出てきています。ドイツ見本市業界としては危機感を持つべきという観点から、このまま現在の状況が続けば、オンラインでの出展や来場が普及し、物理的に開催される見本市の規模は縮小され、ドイツ国内など地域限定の出展者のみとなるのではと懸念しています。

現実的には、間もなく以前と同じように、特に一般来場者を対象としない専門見本市に関しては、多くの来場者が世界中から来場するというのが大方の見方ではありますが、その一方で、今回のコロナのような不足事態から渡航規制や出張経費削減が進み、一定数の来場者がデジタルでの参加を希望するようになる、結果として見本市がコンパクト化されたりローカル開催になる可能性もゼロとは言えません。こうした状況に備えて、ハイブリッドな見本市出展体制を整えておくことが、これからは益々重要になります。

 

4.サステナビリティ

 

見本市での環境保護にも焦点が当たっています。出展ブース等で使われる紙メディア等の素材から、移動を含む見本市への参加という物理的な行動自体が環境負荷がかかるため、不要な部分は削減されていく方向にあります。

また同時に、再生可能であったり環境負荷の低い素材で構成される出展ブースなどが主流に。見本市出展社の社会的責任が注視されるようになってきています。

  

5.プランニング(入念な準備)

 

 

これからの見本市には、これまで以上に入念な準備、プランニングが求められます。ハイブリッド見本市はデジタルとアナログの利点を活かすことができ、これまでの見本市ではできなかった新しい可能性が広がります。

その一方で、実現するにはデジタル、アナログ含め様々な形式での準備や技術が必須となります。これまでの見本市では、どちらかというと見本市の現場で全てを対応できるようにしていればどうにかなる、見本市開催初日までに展示ブースと展示品が準備できれば、後は現場て体当たり、という側面があったと思います。これまではどうにかなったかもしれませんが、これからはこうした単純なやり方が通用しなくなると言われているのです。

ではどうすれば良いのか。アナログ、デジタル含め何から何まで用意できれば理想的ですが、それは無理があります。貴重なリソース‐予算と労力を、本当に必要なところに集中させられるかどうかが重要になってきます。顧客が真に求めている事に準備のエネルギーを集中させる。そのためには、顧客を知る事がこれまで以上に大切になります。これまで以上に、ターゲットとする顧客を理解し、顧客が求めるオファーを用意できることが成功への近道となります。

 

6.人材と技術

上記で挙げられたこれからの見本市で求められるポイントを踏まえて、しっかりと成果を上げていくためには、豊かな経験やスキルを持つ人材と技術の活用が最も重要になります。

これまでの見本市での経験に加えて、新しいスキルや経験が必要になるということです。さらに重要なのは、デジタルであったりアナログであったり、様々な要素で構成されるようになる「これからの見本市」で、それぞれの要素をバランス良く繋ぎ合わせていく力です。

 

これら全てに関わる人材をご自社内で完結させることは、特に海外で開催の見本市となると、大変難しいと思います。海外での見本市の場合、ご自社の強みはそのまま活かされながら、現地での経験やノウハウ豊富なサポート会社をうまくご活用いただく事で、変わりゆくドイツ見本市の中で、これまで以上に高い効果を生み出すことが可能になります。

私達でお役に立てる事がありましたら、何でもお気兼ねなくお知らせくださると嬉しいです。

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