見本市業界関連企業の業績が劇的に回復しています

 

青山 香織

アンサンブラウ イベント+マーケティング

 


見本市業界関連企業の業績が、世界的に大きく回復しています。

 

見本市業界世界連盟(UFI: The Global Association of the Exhibition Industry)による見本市業界関連企業への定期的調査「UFIグローバルバロメーター」の結果です。

 

世界の見本市関連企業334社を対象に、2022年、そして2023年上半期の売上見込みについて調査した結果です。

 

日本語にすると、このような内容です。

 

 

2019年の売上を100とすると、コロナの影響をまさに受けた2021年には世界平均で約4割(41%)まで落ち込みましたが、2022年は73%、2023年前半は約9割(87%)に回復する見込みにあります。 

 

この調査は2022年7月に実施。

調査対象である見本市関連企業には、世界の見本市の主催会社、会場の運営企業、ブース等の設営企業、弊社のようなマーケティングサポート企業などが含まれます。

 

これらの企業の業績が大きく回復しているという事は、それだけ、世界中の多くの企業が見本市に戻ってきていることを明らかにしています。

 

もう少し詳しく、地域別に見てみましょう。

上の図の世界全体と欧州、アジア・太平洋をクローズアップしてみます。

 

 

 世界全体(左側)では、先ほど見ましたように、今年は73%の回復、来年上期は87%まで回復見込となっています。

 

アジア・太平洋地域(右側)では、今年65%、来年上期に79%の回復と、欧州、さらに世界平均と比較しても緩やかな回復傾向にあります。

大きな要因としては、数的多数の中国の回復が遅れている点が、アジア・太平洋全体の回復を遅らせていると考えられます。

 

欧州地域(中央)でみると、回復率は世界平均より高く、今年すでに9割近い87%に回復しており、来年上期はさらに、96%まで回復が見込まれています。

基準となっている2019年は、「見本市イヤー」と呼ばれ、例年よりも見本市関連企業の業績が10~20%上向いた年でしたので、2019年より前の例えば2018年と比較すると、すでに2018年よりも業績が向上している国もあります。

 

地域別で見ていくと、欧州の回復率が群を抜いて高いことがわかります。

特に来年上期に90%以上の回復を見込んでいるのは欧州だけで、欧州以外の地域、アジア・太平洋、北米、中南米、中近東いずれも来年上期は約8割台です。

 

欧州が群を抜いて回復が早い理由として考えられるのは、まずは、見本市が欧州のビジネスにとって欠かせない、最重視される存在であるからだと思います。

 

コロナ感染拡大の深刻な影響を受けた欧州では、多くの国がロックダウンでの行動規制をしき、特に様々な国、地域から人が集まり交流する場である見本市の開催は厳しく規制され、中止や延期が相次ぎ、開催できた場合も人数の制限があったり、オンラインを活用したバーチャル見本市での開催が約1年続きました。

当初は、これを機会に見本市はデジタルに移行するのではないか、という見方が強かったです。

 

ドイツでも、特に技術系の見本市ではデジタルでの開催に重点を置く開催が増えつつありましたが、その過程で出展企業から出てきた声が、「デジタルでは新規顧客の獲得が難しい」という指摘でした。

すでに取引のある既存企業とのビジネスであれば、オンラインでその後の取引を発展させていく事は可能ですが、まだ取引のない、新しい顧客とは、物理的に会って、話をして、価値観を共有できて初めて、成約に結び付くと感じた出展企業が多くありました。

 

ドイツの代表的な経済研究所ifoによる企業調査では、約半数のドイツ製造業企業が、見本市が中止となったために損失を被ったと回答しています。

ドイツ商工会議所の企業アンケート調査でも、見本市中止は物流の問題に次いでコロナ禍での深刻な問題となっています。

また、2021年末にメッセ・ベルリンが実施した調査では、ベルリン在住者の約9割がビジネスには見本市が必要と回答しています。

 

ドイツでは見本市が開催されるようになり800年以上も経つと言われています。

見本市が開催されないという、これまでに無かった状況に直面して、改めて見本市の重要さが認められた感があります。

 

一方で、欧州での見本市再開が他の地域より速い背景には、デジタル化の遅さがあるのではないかと、私は思います。

ビジネス、特にBtoBで成熟した産業分野では、未だにアナログなコミュニケーションが主流となっているところがあります。

弊社ではアジアや米国での市場調査も承っておりますが、デジタル分野の調査では、欧州諸国での進みがゆっくりである点に驚かされます。

(逆に、分野や企業によっては、ものすごく進んでいる場合もあります。)

 

デジタルがうまく機能していないからアナログなコミュニケーションである見本市が必要、という点も大きいと思うのです。

ゆっくりとはいえ、今後デジタルの普及が進んでいくと、欧州での見本市の重要性も変わってくるのではないかと思います。

そうした変化にちゃんと乗っていけるように情報収集は欠かせないですね。

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変化のひとつとして、今注目したいのは、従来のスタイルの見本市にデジタルを活用する、ハイブリッド型見本市です。 

 これまでの見本市は、開催期間に集中していたと思いますが、ハイブリッド見本市では、開催期間中だけではなく、開催前から開催後までを活用していくことが可能になります。

ハイブリッド見本市による新しい機会を生かしていくことが、これからの見本市での必勝法と言えると、私は思います。

 

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